00/10/04
題:「 甘 え の 一 日 」
【 孫坊、キー君 PART:2 】
甘えの一日
小学校4年生の男の子の孫が2ヶ月に一度の割で自分ひとりで
私の家に遊びに来る。甘えの一日である。
この日は彼にとってはゴールデンタイムとでも言うか宿題、
親のしつけ、習い物などから一切開放されてじいじとばあばに思い切り
甘えられる一日である。食べ物も飲み物も何でもいただける。
彼が持参するものは着替えのほかは自分の最愛の遊び道具である。
昨年までは任天堂のゲーム機を持参し、
何時間も自分ひとりで黙々と遊んでいた。
ちなみに自分の家では一日一時間と決められている。
今年に入ってからはソニーのプレステーション−1というのを持ってきて
プロ野球の相手をさせられる。
ゲーム機の扱い方を説明してくれるが自分でチームや選手を作ったりする
設定がたくさんあるので、簡単には説明できない。
それでなくてもやっとパソコンが扱えるようになった年寄りに
短時間でマスターできない。
覚えが悪いのでマニュアル本を出して読めという。
大体のことは理解したがゲーム機で操作するとなると
指先が着いていかない。もたもたして大負けを食らってしまうと、
満足そうに喜んでいる。
いくらストレスの発散の日だからと言って
甘えさせてやるのもいいが、こんな事をずっとやっていると
ゲームに遊ばれる人間になってしまいそうだと気がついたので
今度から何か創作活動を一緒にやろうと思い、自分が少年時代に経験した
木工作品を作る事を提案したら、何とすんなり乗ってきた。
次の甘えの日「きー君、潜水艦って知ってるかい」
「知らないよ」「よし、じいじが教えてあげよう」といって準備しておいた
垂木(30cm)、空き缶、魚釣り用の錘、道具は切り出しナイフ、鑿、
ブリキバサミ、錐、どれもはじめて見る物らしい。
手伝ってやりながら垂木を舟型に削らせる。
なれない手つき、危なっかしくて怪我をされたら大変と、
手伝う方が多くなる。何とか形になった。
次は空き缶を切って翼を作る、
金属が切れる事に不思議さを感じているらしい。
船底に鑿で穴をあけ錘をはめ込んで釘で止める。
大体の感じで比重が0.8くらいになるように調節してやる。
翼をつけて、スクリューを取り付け出来上がり。
ペンキ塗りは親の宿題にした。
「じいじ、これ本当に潜るの」「どうかな、やってみようよ」
お風呂に水を入れ浮かべてみた。いい感じで浮いている。
「スクリュウ−を巻くよ」最近のおもちゃは動力がほとんど電池だから
ゴムのエネルギーを不思議がっている。
巻き終わって「さあ、潜るよ」手を放した。
「潜った」「潜った」「やったー」二人で大歓声を上げた。
潜水艦の機能について説明してやった。戦争とは全く縁のない世代には
国家の防衛から説明しなければならない。
朝からはじめた木工作品は夕方までかかった。
二人とも充実した達成感を味わい、戦争の恐ろしさを話すいい
機会にも恵まれ本当によかったと思っている。
孫も物作りに興味を持ち次回はPETボトルでロケットを
作る事を約束をした。日刊工業新聞社から「水ロケットを飛ばそう」と
いう本を取り寄せて目下勉強中である。
甘えの一日も甘えが何かを教えなければならないなあと
この歳になって痛感している。
( 己斐上 T.N )
以上