おはなしろうそく会による 「おとなのためのストーリーテリング」


   語り手の背後は黒幕で覆われ,前の机の上にはキャンドルが一つだけ。カーテンも閉じられ、部屋の照明も消されているので、3階会場の広間は薄暗い。
   80名のお母さん方が各自座布団を一枚ずつ持って座ると、畳の部屋はみるみる四隅までいっぱいになった。この催しの常連さんが何人かおられるのが雰囲気で分かるが、私語を交わす人は居ない。キャンドルの点火と同時に語り手は話し始めた。キャンドル効果を出す為に、写真撮影も遠慮した。
おはなしろうそく会の7人の語り手たちが今回用意してくださったのは、下記の7編だった。

日本民話       「風の神とこども」
               「馬方と鬼婆」
               「ねずみ経」

ロシア昔話       「金色とさかのおんどり」
              「魔法の馬」

アイルランド昔話  「お話を知らなかった若者」

アメリカ昔話     「小さな焦げた顔」

   今回は、「おとなのためのストーリーテリング」と銘打ち、託児所まで設置されていたせいか、若いお母さんが大半を占めていた。内容も7編と、とても盛りだくさん。普段はお母さんが幼児を膝に抱っこして聴く形なので、こどもの集中力の関係もあって3話編成が多いとのことだった。
   それにしても、語り手の皆さんの語りの巧みさとテンポのよさ。言葉も滑らかで、鮮明。「朗読」ではなく「語り」なので、語る側と目線が合い、聞き手の心はまる掴みされる。ストーリー中の登場人物が歌う場面では、本当に歌ってくださるわけで、こちらの体までがリズムに乗ってしまうし、目を閉じて聴いていると、場面が頭の中に広がっていくのだ。
   10時半に始まったこの会も、あっという間にお昼で終了。西区図書館の司書の方が、今日のお話の載っている本の貸し出しのご案内と共に、それらの本を会場に持ってきてくださった御親切に、驚いた。
   いつもは育児に翻弄され、疲れきってしまうこともあるだろうお母さんも、ひととき心和む時を持てたことで、とても優しい表情で会場を後にしているのを見て、この会の意義を改めて感じた。